POWERオペラ"CARMEN"

新宿区演奏家連盟「カルメン」公演から


このコーナーでは、去る8月10日の土曜日に新宿文化センターで行われた、ビゼーのオペラ「カルメン」全曲公演の模様をお伝えします。

新宿区内のアマチュア音楽団体、オーケストラ、吹奏楽、室内楽、そして個人演奏家を中心とした新宿区演奏家連盟では、昨年1995年から毎年1回のペースで 、市民オペラの企画と上演を行っています。

第1回となった昨年1995年には、ベルディの名作「アイーダ」を公演し、好評をいただきました。

そして第2回となった今年1996年は、ビゼーの傑作オペラ「カルメン」を上演いたしました。

写真=「カルメン」のステリハから。


公演当日には、夏休み中のご家族連れなどが多数ご来場いただき、ご入場者数は1600名様余りを記録いたしました。

筆者もお約束どおり、受付チーフパーサー兼プログラム販売係をさせていただきました。お陰様で1部300円のプログラムを8万円ほど売りさばき、当日券の売り上げと合わせて、連盟に献上させていただくことができました。

写真=「カルメン」のステリハから。右端は舞台袖で待機する演出スタッフ。照明、舞台スタッフは細心の注意で公演に臨んだ。


しかしそれでもプログラム&チケットの印刷経費である12万円には手が届かず、また、昨年「アイーダ」公演での焦げ付き債務をかかえる連盟としては、今後の運営資金の確保も大きな問題となってきました。

そこで今年からは、当日チケットのお友達譲渡を一切禁止し、また出演者のチケット売上の回収を徹底することによって、最終的には何とか黒字運営に転向できたということです。

しかし、どんぶり勘定的な要素は今だに残っているので、今後はより一層の経理監視と、会費回収の徹底を行っていくことを確認しました。


写真=「カルメン」のステリハから。


昨年行われた「アイーダ」公演の際には、舞台リハーサルが長引いたために、開場時間が30分程度遅れてしまいました。そのため大ホール入口には長蛇の列が出来て、文化センター自体に入れないというお客様からの苦情が殺到するという状況になってしまいました。

そのため今年も開場には大変な緊張感、並びに文化センター側からの圧力も加わり、早くも集ってこられたお客様方の列におびえながら、開場準備が進められたのでした。


(左)弦楽器の打ち合わせ。弓順で最後の盛り上がりを見せる。
(中)なぜか練習中から疲れている本番指揮者の樋本英一先生。
(右)ファーストの末席に陣取る園江詩子連盟理事長。


本番当日の8月10日という日は快晴になってしまい、朝から気温も急上昇し、真夏そのものの天候となりました。
昨年は9月の公演だったため、当日は何と台風が押し寄せてしまうという緊張の本番当日でしたが、今年はさすがにそういう心配もなく、まずは予想通りの本番当日をむかえることとなりました。

新宿文化センターは新宿駅からは遠く、最近では集客力の弱さが指摘されています。何しろ東京芸術劇場のような主要駅に隣接したタイプの劇場も多くなり、しかも最新鋭の設備と内装を誇る新型劇場に比べると、やはり新宿文化センターでは不安になります。

新宿区には文化センターの他に、パナソニック・グローブ座という演劇専用の劇場もありますが、こちらも新大久保駅から歩いて15分位。決して条件は良くありません。
他には改造中の四ツ谷公会堂が期待を集めていますが、最近の話題としては、新宿に建設されたオペラ座が主力となっています。


写真左=楽屋で眠い目をこするのはキノくん。二日酔いか。
写真中=当日朝のスタッフ打ち合わせ。不気味な静けさが漂う。
写真右=やっと本番にこぎ着けた指揮者の樋本先生と、練習指揮者の村井音文先生。


新宿になぜオペラ劇場が出来たのかは知りませんが、そもそもオペラの上演のためには、それなりの劇場設備が欲しいところなのです。

新宿文化センターには、とりあえず大きなオーケストラ・ピットがあるので少しはマシと言えますが、やはり敷地面積一杯に建設されているため、複雑な舞台設備の搬入が難しくなっています。

特に舞台転換のために、回り舞台などの装置があると大変便利です。これならば幕が降りているわずかな時間で舞台を転換できるからです。

ウィーン国立歌劇場で上演されたワグナーの「パルシファル」では、突然ステージに開いた穴から、天井までとどく巨大な十字架が舞台の下から出てきたり、舞台一面の草原のシーンが、吸い込まれるように舞台後方へと下がっていくといった演出で話題になりました。
ウィーン国立歌劇場には、舞台の後ろ側に50mほどの広さがあり、大がかりな演出を可能としています。

このような設備を日本で建設するのは大変ですが、しかし何かとこだわる日本人。普通のコンサートホールで満足していられない時期に達していることも確かでしょう。


写真=本番前の舞台裏。セットが無いと単なる怪しい集団にしか見えない。


舞台設備と並んでオペラやバレエで大切なのは、出演者の舞台衣装です。
演劇は衣装で決まるとも言いますから、今回もかなり力が入っているようです。

ちなみにこれらの衣装は、すべて出演者の自前です。どうやってこんな衣装を用意するのか想像もつきませんが、とりあえず皆さんどこからか調達してきました。こういう物は本人に任せた方が確実です。

控室にこもって1時間。出てきた出演者たちは、もうすでに自分の世界に突入しています。あとは本番を待つだけ状態。


(左)花束が届いたキノくん。いよいよ春の予感か。
(中)いつまでも美貌を保つコンミスの島根尚子さん。トロンボーンのご主人とともに出演。
(右)グローバルな達人を集めた打楽器陣営。本番が怖い。


ところで今年の本番で指揮をしていただいた樋本先生ですが、実はこの人、翌日11日には自分の結婚式を控えていたのでした。

なぜ本番の次の日に結婚するのか、または結婚式の前日に仕事を入れたのかは不明ですが、とりあえずおめでたいことです。

普段は二期会などの公演で副指揮者を努めていらっしゃる方ですが、今回はアマオケの本番ということで、何かとご苦労も多かったようです。


(左)舞台裏でダンスの練習。突然遭遇するとかなり驚く。
(中)衣装がズリ落ちないように縫っている図。ちなみにピーターではない。もちろんコロッケでもない。
(右)度重なるアクシデントに脱力する樋本先生。


そうこうしていても本番はやってきます。普通のコンサートとは違い、オペラの場合には出番が人それぞれ。歌に、踊りに、演技に、演奏にと、皆さんそれぞれの練習の成果が発揮されることになります。

お客さんも大勢詰めかけていただき、あとは本番のステージに臨むだけです。特に舞台上の出演者の準備は大変なようですが、それでも今回は万全の準備のおかげで、何とか開演にたどり着きました。


「カルメン」の本番ステージ。


ビゼー作曲_オペラ「カルメン」全4幕_日本語公演

1996年8月10日(土)
開場PM3:30
開演PM4:00

新宿文化センター大オール

配役

カルメン 斉藤美智子
ドン・ホセ 村上敏明
ミカエラ 鈴木慶江
エスカミーリョ 米谷殻彦
フラスキータ 大原一姫
メルセデス 新村麻里子
ズニガ 吉田厚
モラレス 小林秀史
レメンタード 飯塚靖夫
ダンカイロ 桑原啓郎



渡辺薫フラメンコ舞踊団/他

新宿オペラ合唱団/ピアノ合唱団

指揮 樋本英一

演出 園江治

副指揮/合唱指導
村井音文/川野直史

児童合唱指導 飯泉薫

照明/音響 大杉幸茂
舞台監督 大島仁

日本語訳詞 そのえおさむ

練習ピアニスト
黒木直子/土方協子/久保田千裕

制作スタッフ
向井美賀子/板倉公子

主催_新宿区演奏家連盟_新宿区民オペラ上演委員会

後援_新宿区/新宿区教育委員会


写真=「カルメン」の本番が終了。舞台挨拶の場面。


「カルメン」では4幕それぞれに休憩があり、演奏時間は3時間にも及んでしまいました。しかも文化センターの大ホールでは、満席に近くなると冷房効果がなくなってしまいます。

特に1階席は立ち見の人で一杯になり、異様な熱気に包まれていたようです。
文化センターは1800席あり、そのほとんどを埋め尽くすほどのご来場をいただくことができましたので、熱気もひとしおといったところではないでしょうか。

とりあえず舞台は無事に終演までたどり着き、拍手喝采をいただくことができました。


お馴染みの面々。卒業した豊永さん(右)は今回はビオラで出演していた。


本番経験のある方ならご承知のとおり、舞台は終演した時からが腕の見せ所です。今回も速攻の後片付け作戦が展開され、舞台上やピットはもちろん、楽屋の片付けから受付の解体までを一定時間内に終わらせなければなりません。

そして1発オケにふさわしく、大ホールの地下にあるリハーサル室での打ち上げが行われることになっていて、楽器を片付けて暇になったオケメンバーから順番に集りはじめました。


(左)打ち上げの様子。ジミーくんみたいな人は、大東文化大オケのコンサートマスター。
(中)元エキストラ部門手配委員の佐藤君が、副指揮の村井さんにサインを迫っている。いつの間にかトラ部恒例のサイン大会に突入してしまった。


アマオケの公演は終わればそこまでです。後は楽しく笑いましょう。特に今回は目立った失敗もなく、寄せ集めにしてはかなりの成功でした。指揮者も満足してくれたようです。

新宿区演奏家連盟では、早くも来年8月の準備が精力的に進められています。曲目はやがて公表されますが、今のところはベルディの「マクベス」が有力視されていて、すでに楽譜の翻訳作業に入っています。

今後の展開もそれなりに楽しみですが、新宿区演奏家連盟としては、このような市民レベルでの意欲的な企画の推進を目的としています。

もちろんそれなりに気合いも必要ですが、やる気になれば何とかなるものです。ぜひ皆さんも、挑戦してみてはいかがでしょうか。


新宿区演奏家連盟 園江詩子理事長

とにかく何とか無事に終了することができました。演奏内容もかなり良かったと思い、安心しています。
特に会場へお越しいただいた皆様には、本当に感謝いたします。
連盟では来年の8月にも、市民オペラを企画し、準備を始めています。
オペラでは、合唱とオーケストラの両方だけではなく、たくさんのスタッフの方を必要としています。これまで同様、よろしくお願いいたします。



_MKV-メインページ
inserted by FC2 system