SiN Episodes: Emergence

シン エピソード1

1998年に発売された「シン」の続編で、「Half-Life 2」Sourceエンジンによるリアルな3D大作の第1弾です。前作の「シン」もかなりよく出来た作品で、個人的にも気に入って何度もプレイし直した記憶があります。当時はBLOOD2やSHOGO(昇剛)などの傑作が多く発売され、FPSにとって豊かな時代だったと言えるでしょう。もちろん現在でも当サイトでご紹介したQUAKE4やDOOM 3などの大作が次々と出ていますし、そうしたリメイクものの流れの一つとして今回は「シン」の続編が登場した形です。

エンジンこそ変わりましたが、内容的には前作「シン」の雰囲気なりテイストなりが予想以上に残されていた感じです。丁寧に描き込まれた都市景観などもその一つですが、この手のゲームに必要不可欠な直進性というか、煩わしさ無くゲームを進めていける爽快感も失われていません。前作ではゲーム中でパソコンを操作してイベントを進めるような場面もありましたが、今回はそうした軽度の面倒もなくなりました。もちろん障害物を乗り越えるなどの若干の難所はあるものの、よくある階段跳びやパズル的な難解なものは皆無で、その点にかなり好感が持てます。

前作と大きく変わったのはむしろ登場人物で、痩せ枯れたコンピュータヲタクは消えて、その代わりに無敵の相棒(笑)ジェシカたんが加わりました。彼女が主人公かと錯覚するくらい活躍していますが、本来のプレイヤーはジョン・R・ブレード大佐という鉄人で、女性遺伝学者エレクシス・シンクレアの陰謀を阻止するという設定は前作と同じです。まあ別に複雑な話しではないのでストーリーはどうでもいいでしょう。中盤からは遺伝子操作で変異した怪物も加わってSFっぽくなりますし、地下あり水中あり、ビルの上ありとステージの変化にも富んでいて飽きさせない内容です。

特筆すべきはBBSでも話題になっているパーソナルチャレンジシステム、つまり自動難易度設定システムで、ちゃんと動作しているのかどうかは別として、今後のゲーム開発に関わっていくであろう新技術だと思います。それと第1弾ということからもご想像できるとおり今回はシリーズ物で、すでに続編が作られているというので楽しみなような複雑なところです。というのも正直言って他の作品に比べるとどうしても短い感じで、これをパッケージ品として出すのはどうかという議論になるギリギリの線に思えるからです。

私的には「思ったより長かったけど、期待したよりは短かった」といったところでしょうか。海外版で20ドルを切る低価格(日本版は4800円)ということを考えても、文句はないにしてもあまりに微妙過ぎます。予定では第2弾と第3弾が発売されて三部作形式になるようですから、数年後にはそれらをまとめてゴールドエディションみたいに再発売されることもほぼ確実なことを考えると、あまりにも先が見えていて力が抜けます。もちろん私を始めそんなことは構わず入手しているユーザーを対象とした商売ではありますが、そうでない人は、まあもう少しのんびり待っていてもいいように思います。

実際のゲーム内容ですが、初期版の状態でプレイした感想としてはやや今いち感も残りました。まずバグが多いことで、FPS特有のラインに捕まってしまうことや、どこかのエリアに閉じこめられてしまうといった類いがやや多めだったこと。それとやはり自動難易度設定の不自然さがストレスになる場合が考えられ、例えば簡単に抜けられたステージの後では当然難易度が上がることになるので、そのあたりの無駄な駆け引きが生じてしまうことが挙げられます。それに遊びでわざと下手っぽくプレイしたみても、難所はやっぱりそれなりに難所になっています。つまりFPSが苦手な人にとっては敷居の高さはさほど変わるものではなく、その点で思ったほど親切なものという印象はありませんでした。今後の進歩も考えられますが、現状ではちょっと疑問が残ります。

バグについてはアップデートで何とかしてもらえる期待はできますが、気になるのはサイバーフロントにしては珍しく日本版の発売が遅め(6月16日を予定)というあたりです。1ヶ月以上もあるからといって日本語版までは無理でしょうし、だったら字幕くらいつけるかと期待しつつ、多分それも無理でしょうから、だとすると何のためにそんなに時間がかかるのかが逆に気になります。しかも海外版20ドル弱に対して日本版の4800円(予定)もやや高い気がしますし、何か煮え切らないものが残る気がするのはなぜでしょうか。

ちなみに日本版パッケージには予想通り前作「シン」が付いてくるようです。もしプレイしたことがない人ならお買い得と言っていいでしょう。というのも今回作はハードウエア的な要求は比較的低めではありますが、それでも現在のそれなりのスペックは必要となることは言うまでもないので、そうした条件にもし足らない場合の救済策としても評価できます。旧「シン」なら今動いているパソコンであればオンボードでもいけるかもしれませんし、私は以前使っていたノートパソコンでも普通にプレイできた記憶があるので、そのあたりにも期待が持てます。






シン エピソード1
■開発元:Ritual Entertainment
■発売元:サイバーフロント
■発売日:2006/06/16
■価格:4200円(税込)

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